「プエルトリコのハリケーン死者、実は4600人」と米大学調査 政府発表は64人

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2017年9月にカリブ海を襲ったハリケーン・マリアによるプエルトリコでの死者数は4600人以上だったとの試算結果が29日、明らかになった。米ハーバード大学の調査チームが発表した。米自治領プエルトリコの自治政府はこれまで死者数を64人と発表してきたが、試算結果は政府発表の約70倍となる。

調査担当者によると、ハリケーン・マリアによる死者の3分の1は、停電や交通網の破壊による医療行為の中断が原因だった。

プエルトリコの自治政府は「死者数が当初の報告より増えることは、常に想定されていた」と説明している。

政府は公式発表の死者数を64人から変えていない。

しかし専門家は、ハリケーンで広範囲が荒廃したため、正確な計算が困難になったと話す。

プエルトリコ連邦自治政府のカルロス・メルカデル氏は、ハーバード大の調査を歓迎すると語った。

メルカデル氏は、「ハリケーン・マリアによる悲劇的な災害は規模が極めて大きく、多数の死者につながった」と述べた。

自治政府は米ジョージ・ワシントン大学にも死者数調査を依頼しており、その結果も近く公表されるという。

同氏は「2つの研究は共に、我々が将来の自然災害により良く備え、生命の損失をとどめる助けになるだろう」と話した。

ハーバード大学の調査担当者によると、プエルトリコでの聞き取り調査から、ハリケーン襲来後3カ月で被災者の死亡率が60%上昇したことがうかがえるという。

調査チームは今年1月から3月にかけて、無作為に抽出選した3000世帯以上に連絡をとり、避難したり家を失ったりしたか、インフラの喪失はどうだったか、死者が出た場合はその原因などについて尋ねた。

さらに聞き取り結果を、ハリケーン直撃から1年以上前にあたる、2016年の同時期における公式の死亡率と比較した。

調査チームによると、医療の中断が「ハリケーンの数カ月後も高い死亡率を維持した一番の原因」だという。

調査チームは、医療の混乱が「罹患(りかん)率と死亡率の両方を増加させる要因となった」と指摘。慢性疾患を患い、電力に依存する高度な医療機器を用いる患者が増えたことが理由という。

ツイッターでは複数の利用者が、2011年9月11日の米同時多発テロによる米国人の死亡者数を3000人近く上回る死者数になったと指摘した。

スポーツメディア「48ミニッツ・トゥ・ヘル」などの記者、グレイドン・ゴーディアンさんは、死者数4600人という試算結果が、2011年の同時多発テロによる死者数やアフガニスタンに派遣された米兵の18年間での死者数、イラク戦争での米軍の死者数をそれぞれ上回ると指摘した。

ゴーディアンさんはその上で、「ハリケーン・マリアより死者数が少なかった戦争もある。米政府は、どうでも良いことだと思ってる」と、連邦政府の対応が不十分だったと批判した。

プエルトリコ最大の都市サンフアンのカルメン・ユリン・クルス市長はツイッターに、「ハリケーン・マリアによる死者数と、大勢の死の一因となった怠慢は忘れられない。当時も今後も、これは人権侵害だ」と投稿した。

調査コンサルティング会社のローディウム・グループによると、ハリケーン・マリアが引き起こした停電は米国史上最大だった

プエルトリコではその後も停電が相次いでいる。ハリケーン・マリアから7カ月近く経った4月にも、プエルトリコ全土が停電した。

米海洋大気庁(NOAA)によると、ハリケーン・マリアによる経済損失は合計で900億ドル(約9兆9000億円)に達した。

プエルトリコでは340万人の米市民が生活している。

ハリケーン被害から3週間、破壊された家屋にたたずむ被災者女性Image copyrightGETTY IMAGES
Image captionハリケーン被害から3週間、破壊された家屋にたたずむ被災者女性

<解説>死者は防げなかったのか?――アリーム・マクブール BBCニュース(ワシントン)

我々が話を聞いたプエルトリコ人の多くが、ハリケーン・マリアで被災した自分たちがあれほどすさまじく苦しんだにもかかわらず、自分たちの苦しみは過小評価され、非常事態への当局の対応はお粗末なものだったと感じていた。

ハリケーンそのものによって死亡した人は相対的に少数だったかもしれない。しかし、ハリケーンから6カ月後、我々は医療の中断のため親族を失った人々に会い、生命維持に不可欠な医療装置を稼動させる高価な発電機の支払いに苦しむ人々を目にした。

自殺者数が急増しているとの報道もあった。ハリケーン・マリアが襲った日から家を失ったままの人は大勢いるし、数千人が電力なしで生活してもいる。

ハリケーンによる正確な死者数はどうあれ、それが公式発表の数字の何倍にも上るのは今や確実だ。より良い緊急対応があれば、どれだけの死者が防げたのか? 米自治領のプエルトリコで。それが米政府に対する疑問だ。

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2017年9月にカリブ海を襲ったハリケーン・マリアによるプエルトリコでの死者数は4600人以上だったとの試算結果が29日、明らかになった。米ハーバード大学の調査チームが発表した。米自治領プエルトリコの自治政府はこれまで死者数を64人と発表してきたが、試算結果は政府発表の約70倍となる。

調査担当者によると、ハリケーン・マリアによる死者の3分の1は、停電や交通網の破壊による医療行為の中断が原因だった。

プエルトリコの自治政府は「死者数が当初の報告より増えることは、常に想定されていた」と説明している。

政府は公式発表の死者数を64人から変えていない。

しかし専門家は、ハリケーンで広範囲が荒廃したため、正確な計算が困難になったと話す。

プエルトリコ連邦自治政府のカルロス・メルカデル氏は、ハーバード大の調査を歓迎すると語った。

メルカデル氏は、「ハリケーン・マリアによる悲劇的な災害は規模が極めて大きく、多数の死者につながった」と述べた。

自治政府は米ジョージ・ワシントン大学にも死者数調査を依頼しており、その結果も近く公表されるという。

同氏は「2つの研究は共に、我々が将来の自然災害により良く備え、生命の損失をとどめる助けになるだろう」と話した。

ハーバード大学の調査担当者によると、プエルトリコでの聞き取り調査から、ハリケーン襲来後3カ月で被災者の死亡率が60%上昇したことがうかがえるという。

調査チームは今年1月から3月にかけて、無作為に抽出選した3000世帯以上に連絡をとり、避難したり家を失ったりしたか、インフラの喪失はどうだったか、死者が出た場合はその原因などについて尋ねた。

さらに聞き取り結果を、ハリケーン直撃から1年以上前にあたる、2016年の同時期における公式の死亡率と比較した。

調査チームによると、医療の中断が「ハリケーンの数カ月後も高い死亡率を維持した一番の原因」だという。

調査チームは、医療の混乱が「罹患(りかん)率と死亡率の両方を増加させる要因となった」と指摘。慢性疾患を患い、電力に依存する高度な医療機器を用いる患者が増えたことが理由という。

ツイッターでは複数の利用者が、2011年9月11日の米同時多発テロによる米国人の死亡者数を3000人近く上回る死者数になったと指摘した。

スポーツメディア「48ミニッツ・トゥ・ヘル」などの記者、グレイドン・ゴーディアンさんは、死者数4600人という試算結果が、2011年の同時多発テロによる死者数やアフガニスタンに派遣された米兵の18年間での死者数、イラク戦争での米軍の死者数をそれぞれ上回ると指摘した。

ゴーディアンさんはその上で、「ハリケーン・マリアより死者数が少なかった戦争もある。米政府は、どうでも良いことだと思ってる」と、連邦政府の対応が不十分だったと批判した。

プエルトリコ最大の都市サンフアンのカルメン・ユリン・クルス市長はツイッターに、「ハリケーン・マリアによる死者数と、大勢の死の一因となった怠慢は忘れられない。当時も今後も、これは人権侵害だ」と投稿した。

調査コンサルティング会社のローディウム・グループによると、ハリケーン・マリアが引き起こした停電は米国史上最大だった

プエルトリコではその後も停電が相次いでいる。ハリケーン・マリアから7カ月近く経った4月にも、プエルトリコ全土が停電した。

米海洋大気庁(NOAA)によると、ハリケーン・マリアによる経済損失は合計で900億ドル(約9兆9000億円)に達した。

プエルトリコでは340万人の米市民が生活している。

ハリケーン被害から3週間、破壊された家屋にたたずむ被災者女性Image copyrightGETTY IMAGES
Image captionハリケーン被害から3週間、破壊された家屋にたたずむ被災者女性

<解説>死者は防げなかったのか?――アリーム・マクブール BBCニュース(ワシントン)

我々が話を聞いたプエルトリコ人の多くが、ハリケーン・マリアで被災した自分たちがあれほどすさまじく苦しんだにもかかわらず、自分たちの苦しみは過小評価され、非常事態への当局の対応はお粗末なものだったと感じていた。

ハリケーンそのものによって死亡した人は相対的に少数だったかもしれない。しかし、ハリケーンから6カ月後、我々は医療の中断のため親族を失った人々に会い、生命維持に不可欠な医療装置を稼動させる高価な発電機の支払いに苦しむ人々を目にした。

自殺者数が急増しているとの報道もあった。ハリケーン・マリアが襲った日から家を失ったままの人は大勢いるし、数千人が電力なしで生活してもいる。

ハリケーンによる正確な死者数はどうあれ、それが公式発表の数字の何倍にも上るのは今や確実だ。より良い緊急対応があれば、どれだけの死者が防げたのか? 米自治領のプエルトリコで。それが米政府に対する疑問だ。

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